DEでは、アカウンタビリティを三層構造で考える。その三層目は、「学習、発展、適応を示すアカウンタビリティ確保」と呼ばれ、インパクト志向を組織の常態へと進化させるためになすべきことが列挙されている。21世紀の世界観に依って立ち、組織内外の状況の変化に即応して組織を改変していくことがDEが拓くアカウンタビリティの新たな地平なのだ。
【DEとアカウンタビリティの考え方(1)〜そもそもアカウンタビリティとは】で述べたように、アカウンタビリティは相手を必要とする概念であるから、「上向き」、「下向き」、「横向き」、「360度」など「向いている方向」を問題にする必要がある。
その上で、の議論になるが、DEで問題にするのは、アカウンタビリティの内容である。我らがマイケルは、米国ミネアポリスから車で3時間行ったところにあるブランディン財団[1]との仕事のなかで、アカウンタビリティの内容の三層構造を編み出し、それを「マウンテン・オブ・アカウンタビリティ(アカウンタビリティの山)」と呼んだ[2]。つまり、アカウンタビリティの履行は山登りのようなもので、まず一層目、それができたら二層目、三層目と登っていかなければならないというのだ。
これらを表1にまとめてみた[3]。アカウンタビリティの山の一層目は、「円滑なマネジメントのための基本的なアカウンタビリティ確保」と呼ばれ、私たちが通常考えるアカウンタビリティの内容に近い。しかしアカウンタビリティ概念はそれで終わりではなく、概念自体が成長し、それに従って私たちのアカウンタビリティ実践も進化しなければならないという。二層目は、「インパクトを示すアカウンタビリティ確保」と呼ばれ、そこでは、「主要なステークホルダーやパートナーと健全な関係構築ができているか」、「想定した事業の成果やインパクトの達成がどれくらい、いかにできているか」、「何を学習し、その学習をいかに適用し、事業改善ができているか」などが問われなければならない。
これらは、いわば組織がインパクト志向になるということを示し、それだけでも組織にとっては大きな成長になる。しかも、これをアカウンタビリティの概念で考えるという所に革新性がある。アカウンタビリティを問うというのは、なにも「お金が正しく使われたか」や「事業が計画通りに遂行され、予定されていた成果が出たか」を問うことだけではないという発想の転換は、この概念を狭い所に押し込めておいた20世紀の世界観から私たちを解き放つものなのだ。
しかし、第二層で終わりではない。「インパクト志向」へと成長した団体は、さらに第三層に向けて山登りを続けなければいけないという。三層目は、「学習、発展、適応を示すアカウンタビリティ確保」と呼ばれ、インパクト志向が一時的なものにとどまらず、組織の常態へと進化させるためになすべきことが列挙されている。そこに「イノベーション、複雑性の考察」や「発展的評価を行う」という文字が見られるが、まさに21世紀の世界観に依って立ち、組織内外の状況の変化に即応して、組織を改変していくことがこの三層目で問われている。
そして、この図には、上向きの矢印(山登り)だけでなく、下向きの矢印もついていることにも注目すべきだろう。それは、第三層のアカウンタビリティの実践が、自然と第二層、第一層のアカウンタビリティの確保につながることを示している。
21世紀の世界観に依って立つことにより、アカウンタビリティの概念も成長させなければならない。DEが新たに拓く地平の一端である。
表1:マウンテン・オブ・アカウンタビリティ
ミッションの達成 |
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第三層 |
学習、発展、適応を示すアカウンタビリティ確保 |
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なすべきこと |
問うべきこと |
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• 振り返りの習慣をつける • 発展的評価を行う • 戦略フレームの評価を行う • システムの改変、イノベーション、複雑性の考察 …等 |
1. 取り巻く環境やシステムがいかに変化しているか。そしてその変化をいかに理解し、自分たちの学習、適応、発展に使っているか 2. 自分たちの戦略フレームを見つめ、それが仕事のやり方やインパクトのつくり方にいかに影響を与えているかについての深い考察をもつことができているか 3. 自分たちのステークホルダーやパートナーのあいだの関係やつながり方はいかにあるか 4. 自組織の多く多様な部分がいかにまとまりのある全体を構成しているか |
第二層 |
インパクトを示すアカウンタビリティ確保 |
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なすべきこと |
問うべきこと |
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• 主要な事業の評価 • 戦略の評価 • 理事へのアンケート調査、理事からのフィードバックを受け取る • 組織の評判を調べる • スタッフからのフィードバックを受け取る …等 |
1. 主要なステークホルダーやパートナーと健全な関係構築ができているか 2. 想定した事業の成果やインパクトの達成がどれくらい、いかにできているか 3. 何を学習し、その学習をいかに適用し、事業改善ができているか |
第一層 |
円滑なマネジメントのための基本的なアカウンタビリティ確保 |
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なすべきこと |
問うべきこと |
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• 財務監査、投資リターン検証 • 人事考課 • 情報システム管理 • デュー・ディリジェンス • 定期的な助成報告 …等 |
1. 事業を計画通りに行ったか 2. 事業実施にあたり、基本的な質的水準を満たしたか
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[2] Michael Quinn Patton & Blandin Foundation, “Mountain of Accountability” (https://blandinfoundation.org/content/uploads/vy/Final_Mountain_6-5.pdf)
[3] 2017-2018年度「伴走評価エキスパート研修」資料より一部改変。また、2017年度研修参加者の三浦宏樹さんがブログを書いている。http://blog.canpan.info/csonj/monthly/201804/1
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