複雑な状況では、“パターン認識能力・発見能力”こそが、次の一手を考える上で有効である。その能力を磨くために、『Pattern Spotting(パターン発見)』というフレームワークを紹介する。
何かを「発見」したときは、誰だってうれしいもの。複雑なシステムに向き合うときも、システムを注意深く観察し、そのパターンを「発見」することで次の一手が見つかるだろう。
本稿では、‟複雑な世界“に対応するための、『Pattern Spotting(パターン発見)』というフレームワークを紹介する。2018年度のCSOネットワーク主催『伴走評価エキスパート育成研修』で、DE(発展的評価)の実践家ケイト・マッケグ氏が紹介してくれたものだ。
引き出し【複雑な世界では、もう「犯人探し」はやめよう】でも紹介しているように、①単純(simple)な状況と②煩雑(complicated)な状況では、物事は要素分解ができるので、対応策が見えやすい。
しかし、③複雑(complex)な状況では、物事は要素分解ができないため、明確な原因や対応策がわからない。この複雑な状況への対処の方法は、「物事のなんらかの規則性や例外を捉えることで状況を把握する」、「介入ポイントを検討する」というアプローチをとる。
『Pattern Spotting(パターン発見)』のフレームワークは、複雑なシステムにおいてパターンを捉えることに適した手法で、状況把握や物事の解釈などで用いることができる。
複雑な状況を説明する「複雑系理論」というものがあるが、性質のひとつである生成・創発(エマージェンス)に自己組織性(self-organization)という特徴がある。これは、個々の主体が独自の動きをすることにより、主体の間に関係性が生まれ、誰も意図しないパターンが生成される、というものだ。
『Pattern Spotting(パターン発見)』により、このような複雑なシステムにおいてパターンを捉えることが可能となる。具体的には以下の表のような問いに答えることだ。
どんなに複雑な状況でも、なんらかのパターンはある。(ちなみにパターンがないこともパターンだ)
1~3の設問は、観察を続け、状況把握をしようとしていれば答えられるだろう。例えば、1であれば、「団体のスタッフ同士で描く成功の姿が共有されていない」、「この団体の事業のファンが全国にたくさんいるが、地元にはあまりいない」など。
3は「Aというスタッフと代表のみが成功の姿を共有している、しかしAは出勤日数が少ないパート従業員である」、「地元であまり存在が知られていないが、近所の学生さんが時々事務所に立ち寄って話をしていく」などだ。
さらに深く観察・解釈を進めると、4~6の設問に対応できるようになり、そして7に答えられるようになる。
『Pattern Spotting(パターン発見)』をおこなうタイミングは、ある程度情報がたまったらいつでも、だ。例えば、別の引き出しで紹介した『3つの質問』を回しているときに、常に組織の中で出てくるキーワードを拾ったり、『システムマッピング』をしていて、様々なステークホルダーに影響を与えている事象や人・組織に注目したり、逆に、評価者が重要だと思っていたのにスタッフたちから全く情報が出てこないプロジェクトがあるなど、例外やサプライズも含めた上記の1~7のいろんなパターンに気がつくことだろう。
この“パターン認識能力・発見能力”は、事業者やDE評価者をはじめ “複雑な状況”に向き合う方たちが普段から持つべき「思考」と言えるだろう。先行き不透明な複雑な状況でも、パターンを見つけることで次の一手が見えてくるかもしれない。以下に『Pattern Spotting(パターン発見)』のワークシートを記載する。ぜひ実践してみてほしい。