DE評価者は、“余白づくり”や伴走支援のスタイルを通して、対象事業の「状況把握と状況分析」の精度を上げることができる。
複雑な世界で事業をおこなうならば、事業者や支援者(評価者・伴走者など)は常日頃から①状況を把握し、②それを分析すること(読み解くこと)が求められる。ここでは、DE(発展的評価)における「状況把握と状況分析(Situation Analysis)」の考え方と方法について紹介する。
①状況把握
社会的な課題に取り組むのであれば、事業や組織の状況、事業を取り巻く環境は、日々目まぐるしく変わるだろう。事業者や支援者は、それらに対して広くアンテナを立てておく必要がある。
評価者であれば、‟評価目的で定めた範囲の情報のみを拾う“というふうに、決して自分の守備範囲を限定しないことが必要だ。なぜならば、DEが対象とするのはゴールポストが動く世界(枠組みが変動する世界)だからである。(引き出し【DEの実践~「さあ、DEやってみよう!」】参照)。
はじめに設定した目的に沿った情報しか見なくなると、肝心なことを見逃したり、全体像や物事のつながりを見失いかねないだろう。あくまでもゴールポスト(見るべき枠組み)は仮置きとして、状況を幅広く見る必要があるのだ。
また状況把握のためには、評価者の視点でいかに‟余白“を設けるかという工夫ができるかもしれない。余白というのは事業者や受益者が物事を表現するスペースのことだ。意識的に余白を作ることで、事業者や関係者から様々な情報を引き出すことができるし、それが何かにつながるかもしれない。例えば、事業者とのミーティングの際にアジェンダ以外で相手が自由に話せる時間を作ったり、「何か変わったことはないか」と問いかけたりするのが良いかもしれない。またミーティング以外でも、食事を一緒にしたり雑談する場を設けることで情報が得られて状況把握が進むかもしれない。そしてこれは別の引き出しで述べた【関係構築(Building Relationship)】の重要性にも関連するだろう。筆者が訪ねたカナダのDE実践者は、事業者たちをホームパーティに招くなど、公私にわたって深い交流をしていたことが印象的である。
②状況分析
①の結果、得られた情報をどう扱うかという観点である。大事なことは事業者や評価者の主観(バイアス)を取り除いて、その情報をきちんとした客観的なデータとして扱うことだ。なので、まずは事実と解釈とを切り分けて情報をストックしていく必要があるだろう。このあたりは、別の引き出し【現実世界を『3つの質問』で捉えよう】を参照されたい。
さらに【システムマッピング】を描くことで多様な関係者が見えている世界を共有したり、【パターンスポッティング(発見)】のフレームワーク使うことで状況把握の結果を読み解くことができるかもしれない。
状況分析をどのようにおこなうべきか、マニュアルやベストプラクティスが存在するわけではない。ひとつ言えることは、従来型評価では評価者は外部者であることが多く、事業者と一定の距離が置かれていたことに対して、DE評価者は事業者に伴走することでその距離を大きく縮めることができる。この伴走スタイルこそが「①状況把握」を容易にして、「②状況分析」の精度を上げるのだ。
次の引き出しでは、状況把握と状況分析に役立つ、いくつかのアプローチを紹介する。これらを参考にして使いやすいものを取り入れ、自分なりのアプローチを築いていくと良いだろう。
◇状況把握と状況分析に役立つアプローチ◇