千葉 直紀

事実を記述していく記録帳であるロードマップは、自分たちがどのような価値観に基づいて行動してきたのかを振り返らせてくれ、不確実な未来への対応を可能にする。

 世界を知るには、「海に出る方法」と「川を登る方法」があるという。前者は空間面の広がりを持つこと(他の場所を見ること)、後者は時間軸で物事を見ること(歴史から学ぶこと)だ。ロードマップは、「川を登る」アプローチとしてDEで活用されているそうだ。

 ロードマップとは、“事実を記述していく記録帳”のことだ。事業者が自分たちのことを知り、今後より良い判断ができるようにするために、過去の出来事や物事の判断という事実を記録しておく。そこから、自分たちがどのような価値観に基づいて行動してきたのかを振り返ることができる。これは、フォアキャスティング(現在からの未来予測)のアプローチのひとつである。

 Global Alliance for Future Food(食に関するグローバル・アライアンスで20団体以上が加盟。以下、GA)の事例をヒアリングさせてもらった時、「プリンシプル」を行動指針として定めて、「ロードマップ」を行動記録として活用していると、紹介された。

GAのロードマップの例を見てみよう。GAでは、以下の4つの観点で記録を行なっていた。

  • Who We Are: 「私たちは何者か」に関すること
  • What We Do: 「私たちは何をする者か」
  • How We Work: 「私たちはいかに活動するか」
  • Change We Want to See 「私たちが起こしたい変化」

そして、この4つについてそれぞれ記載した上で、「その重要性」を付記する。

何者?

何?

いかに?

変化

GAに2つの財団(財団Aと財団B)が加盟

<重要性>

GAが持続可能な食のシステムを推進する戦略的ネットワークであることが認知された。

ウエルビーイング推進WG会合

 

<重要性>

WGとして、3つのPrinciples を採択

コミュニケーション委員会の結成

<重要性>

ネットワークにとってのコミュニケーションの大きな役割を認識

モンペリエ会合に29財団が結集

<重要性>

食のシステムは単一でなく、多様なシステムが混ざり合っていることを認識

 

最後に、2017年にGAのDE評価者(Pablo氏)に行なったインタビューを紹介したい。

 「DE評価者の役割は insight をしっかり data/evidence として跡付けして、大きな変化を関係者で共有すること。それがなにか、どうして起こったか。『大きな』出来事かどうかはプリンシプルを基準に考える。これによって組織運営の軌道修正とそれに至る合意が可能になる」

いかがだろうか。

「川を登る」アプローチの「ロードマップ」は、不確実な状況の中でも自分たちの一歩一歩の歩みを記録することで、自分たちのプリンシプルを確認しながら、不確実な未来への対応を可能にするのだ。さあ、使ってみよう。