千葉 直紀

問題分析には、直線的に考える方法(ロジカル・アプローチ)や曲線的・包含的に考える方法(システム・アプローチ)がある。そして状況が刻々と変わる状況において何より大切なのは、問題に向き合い続ける姿勢だ。

 ”解決策がわからないのではない。問題がわかっていないのだ。(It isn’t that they can’t see the solution. It is that they can’t see the problem.)”という偉人の名言がある。(イギリスの作家:ギルバート・ケイス・チェスタートン)

 この言葉の通り、解決策に飛びつく前に、問題に向き合う必要がある。「問題分析」は、解決したい社会課題にまつわる各種の情報を整理して、問題を構造化していくことだ。この問題の整理や構造化は、全てが理解できるわけではない、限界を知った上で、向き合うことが重要だ。具体的には、次のような問いに答えることができることが望ましいだろう。

  • 何が問題なのか?
  • その問題には、どのような要素が含まれているのか?
  • なぜその問題が生じているのか?
  • なぜその問題が解決できていないのか?
  • 対象者は何にどのようなレベルで困っているのか?

 問題構造を把握することは、対象者のニーズを把握することやそのニーズを満たすための打ち手(プログラム)を考える上で欠かせない。この問題分析抜きに、事業のアウトカム(成果)を語ることは不可能だろう。

 それでは、問題分析を行うとき、何をどのように考えれば良いのだろうか。問題分析のアプローチを大きくわけると、

  • 直線的に考える方法(ロジカル・アプローチ)
  • 曲線的・包含的に考える方法(システム・アプローチ)

があるように思う。

  • 直線的に考える方法(ロジカル・アプローチ)は、ロジックツリーによってピラミッド構造を描いて問題を細分化していく方法である。例えば、「稲作農民が貧しい」という事象について、下図のようにブレークダウンして考えていく。PCMテキストによくまとまっているため、そちらを参照されたい(無料ダウンロード可能である)。

 特定非営利活動法人PCM Tokyo ライブラリー

 図1:直線的に考える方法(ロジカル・アプローチ)による問題分析の例(PCM計画編テキストより)

  • 曲線的・包含的に考える方法(システム・アプローチ)は、DEが与件とする複雑な状況で使いやすい。これは具体的には、システムマップリッチピクチャーなどの方法を活用するアプローチである。

 しかし問題構造が簡単には明らかにならないことも多いだろう。そのような場合は、問題分析にこだわりそこで足を止めてしまうのではなく、一旦問題分析を“仮置きすること”をお勧めしたい。全体像を完璧に捉えてから動くのではなく、現時点で見えているところでOKとして、あとは事業を進めながら問題構造を捉えていこうという、まさにDE的・フォアキャスト的なアプローチだ。事業を進めるつれてどんどん情報と学びが得られるので、それを活用して、全体像に肉付けを行なっていく。

 またこのあたりは、評価とシステム思考を組み合わせた研究でアプローチの整理が進みつつあり、Bob Williamsなどが研究や情報発信を行なっている。

 図2:曲線的に考える方法(システム・アプローチ)の例(出典:不安な個人、立ちすくむ国家(経産省若手プロジェクト)

 様々な方法で問題を捉える手法がこれからも開発されていくだろう。しかし、状況が刻々と変わる状況において大切なのは、問題に向き合い続ける姿勢だと思う。ソーシャル・イノベーターやDE実践者は、諦めない姿勢で社会的課題と向き合っていただきたい。