「事実」と「解釈」を切り離して状況を的確に捉えるために『3つの質問』を活用しよう。そして事実(What)をリアルタイムに拾う仕組みを作ろう。これらを行うことで、状況対応を可能にする。
DEは、状況適応型の評価だ。ゴールポスト(評価目的)が動く状況で、常に状況の変化を把握して事業はそこに対応していく必要がある。そんな時に有効なのが『3つの質問』だ。これらの質問を実践する事によって、状況対応型の意識・姿勢が可能になる。
それぞれの質問を詳しく見てみよう。
What?
観点:
- “目の前で起こっていること”は何か
- どのようなデータが存在するか
- 誰がどう関わっているのか
- 評価者及び、ステークホルダーには何が見えているか
- ステークホルダーの反応はどうか
- 我々(評価者及びステークホルダー)をとりまく環境・ネットワークの反応はどうか
- データは何を伝えているか
- “目の前で起こっていること”を示すインディケーターは何か
- 変化の兆候を示す“合図”は何か
So What?
観点:
- これらの生成された情報からどのような事を読み取れるか
- 我々(評価者及び、ステークホルダー)にとって、今現在どのような意味があるか、今後どのような意味を持ちそうか
- 今、目の前で起こっている“変化”(もしくは“変化の兆候”)は我々及び、我々をとりまく環境・ネットワークに対してどのような影響を与えるか
- “目の前で起こっていること”について:
‐それに対して、何かしらの“例外”は見て取れるか、それはどのような内容か
‐それに“相対する”事柄はあるか、それはどのような内容か
‐それに“驚き”はあるか、それはなぜか
‐それに“困惑”するところはあるか、それはどのような内容か
‐それに対して、何かしらの“つまづき”を感じているか、どのような“つまづき”を経験しているか
Now What?
観点:
- 我々が取りうる選択肢は何か
- 目の前で起こっていることに対して、誰がいつどのように行動したら、生成した機会を最大限に活かす事が可能か
- 我々がとりうる行動による周囲へのポジティブ・ネガティブな影響はなにか
- 我々が(目の前で起こっている事に対する)新たな一歩を踏み出す(対応)にあたって:
-誰が何をするのか
-いつから、いつまで何をするのか
-我々が現在持っているリソースは何か
-何がどうなったら“終わった”と判断するのか
‐今後、どのようなデータの収集を心がける必要があるか
‐この生成した機会について、誰が把握しているべきか(誰に知らせておくべきか)
- どうやって次の“What?”に備えるか
- 新たな状況が生成するとしたら、その兆候はどこに見てとれるか、インディケーターはなにか
DEはリアルタイムのフィードバック、学習、意思決定、そして発展を支援する。このサイクルをいかに沢山、そして的確に行うかが、DEとしての仕事の質を左右する、と言われている。
2017年度のDE研修では、この『3つの質問』を自由にひたすら回して実践してもらったが、2018年度は以下の5領域にわけて『3つの質問』を活用してもらった。どのような形式が使い易いか、そして本質を捉えることができるか、実験中である。参考までに、領域のヘッディングをつけたものを紹介したい。
◆領域1:事業 (団体が注力している事業について、イノベーションの所在)
◆領域2:被益者の様子(被益者個々が置かれている状況や変化、活動の影響による変化、など)
◆領域3:ステークホールダーとの関係性 (行政、企業、他団体、その他 団体に影響を及ぼすグループ【組織化されていなくても】)
◆領域4:外部環境の変化(政策・施策、地域の社会経済状況、自然災害の影響、など)
◆領域5:組織内の状況(職員のキャパシティ、目的設定、理事会の動き、組織文化、意思決定プロセス、職員間の関係性、組織内の規定、財務状況、等)
想定している使い方は、
① Whatが何かまず捉え、いくつか挙げる。
② Whatを領域のいずれかに分類し、ヘッディング(領域1〜5のいずれか)をつける。
だ。Whatが変化したり、新たなWhatの出現により、『3つの質問シート』の記入内容は変えていける方がよい。それらの変化の道筋を整理するために、番号をふって管理していくのが良いだろう。
特にDE実践において大事なことは、この3つの質問のうち、Whatを拾う仕組みを作っておくことだ。もしあなたが外部評価者や外部支援者であれば、事業者(団体内部のキーパーソン)との関係性をつくり、いつでも相談してもらえる関係になることがWhatを捉えるために必要だ。事業者であれば、事業のモニタリングをおこないながらKPI以外の情報も拾えるように、現場のスタッフやボランティアと信頼関係をつくりながら”ゆらぎ”を捉えるアンテナを広げておきたい。