千葉 直紀

現状をこれだけ短時間でリッチに(豊かに)共有できるツールはない。リッチピクチャーを描くことで、関係者の視点を取り入れたシステム把握が格段に進む。

 「リッチピクチャー」は、システムを捉えて共有するために使える方法だ。あるテーマ(社会的課題)に関する現状やそこに関わるステークホルダーについて、彼らの考え・思惑・感情まで含めて表現したり、ステークホルダー同士の関係性を描くなど、情報を自由に入れ込むことができる。これはシステム思考で紹介される「因果ループ図」よりも、柔軟で自由度が高いシステム把握の手法だ。

以下に例を示す。これは、「2017年伴走評価エキスパート育成講座」で Kate McKegg氏が紹介してくれた講義資料の中に描かれているものである。

システム思考×評価学の大家Bob Williams氏からは、以下のようにリッチピクチャーの描き方を教えてもらった。

 ・机の上には模造紙とマッキーだけにする(それ以外は置かないこと)

 ・一人が絵を描いているときは、そこに注目する(話ながら描く)

 ・人物や組織を描く(イラストでも良いし、文字でもいい)

 ・それらの関係性を線でつなぐ

 ・そして、絵のうまさは気にしない、とにかく自由に描くこと

リッチピクチャーは一人ではなく関係者と共に描くことで、それぞれがどんなことを見えているのか、どんなことを考えているのか、それぞれにとってのインセンティブやリスクは何かと言ったことが、より良く見えてくるだろう。そして描くのに全然時間がかからないことが良いところだ。簡単なものであれば、10〜15分あれば描けるという。

Bob Williams氏のワークショップでは、複雑な問題についてリッチピクチャーを描くことで、それぞれのステークホルダーの思惑が異なり、課題が解決される方向にベクトルが向いていかないシステムであるということを体感することができた。

使い方は、第三者への説明というよりも、多面的な視点で複雑なシステムを捉えること、そして一緒にリッチピクチャーを描く人との共通理解の醸成に向いているように思う。

そして現在のことだけでなく、過去のことや未来のことなど、リッチピクチャーの使い方は多様な可能性があると思う。

以下は、CSOネットワークが2018年度の事業の一環で伴走評価をおこなったNPO法人しんせいのリッチピクチャーだ。未来のありたい姿について、リッチピクチャーを描いた。

可能性あふれるこの手法、ぜひいろんな場面で活用いただけると良いと思う。