千葉 直紀

事業・活動は、セオリーなしには組み立てられない。このセオリーを描いてくれる代表格がロジックモデルだ。ロジックモデルの得意なこと、苦手なことを把握しながら、場合や状況に応じて適切に使い分けられるようになると良いだろう。

 「ロジックモデル」(Logic Model)の活用は、評価の王道である。すべてのプログラムや政策は、なんらかの理論(セオリー)に基づいている。セオリーは、原因と結果の連鎖からなる「仮説」だ。このセオリーを図示したものが「ロジックモデル」だ。「ロジックモデル」は、プログラムのための利用可能な資源、計画している活動、達成したいと期待する変化や成果の関わりについての考えを体系的に示すものである。

 事業が目指す「成果(アウトカム)」とそこに至るまでの道筋を因果関係で描くことができ、時間軸を含めて考えることができる。ロジックモデルは、「自分たちの活動が提供している価値をいかに説明するか」のツールであり、「このような価値・成果を生み出すために、どのような活動を、どのようなプロセスで行うか」を考えるためのツールである。

以下にロジックモデルの描き方の代表的なステップを示そう。

・生み出したい長期的成果を起点に、バックキャスティングすること。まずは事業目的を踏まえて、「長期アウトカム」を考える。

・そこから逆算して、事業の射程と言うべき「中間アウトカム」を描き、その後「中間アウトカム」を生むための「初期アウトカム」を設定する。「初期アウトカム」は、事業の成果である「中間アウトカム」を生み出す前提条件となるものだ。

・「初期アウトカム」を生むための「アウトプット(結果)」を想定し、そこから「アクティビティ(活動)」を設定する。

・「アクティビティ(活動)」や「インプット(投入)」は、実現可能性を踏まえて作成する。

 現実的には、既に動いている事業・活動に対して、ロジックモデルを描くことが多いだろう。この場合でも、「アクティビティ(活動)」や「インプット(投入)」から描くのではなく、達成したい成果からバックキャスティングで描くことを覚えて欲しい。

 また評価が明らかにする「価値」は、対象者がいてはじめて成り立つものである。すなわち「誰にとっての価値か」が重要であり、ロジックモデルで示されるアウトカムは、誰にとっての価値かをはっきりさせることが必要である。

 ロジックモデルは現実世界を切り取ったもので様々な限界はあるものの、セオリーなしにプログラムを作るわけにはいかない。ロジックモデルを描くことで、誰がみても解釈のズレが少なく多くの人にとってわかりやすいものとなる。また作成プロセスにおいて、作成に関わる関係者にとっての意思統一や相互にとっての気づきにつながる。

 このロジックモデルは従来型の評価ではよく使われるが、DEにおいてももちろん使われている。書籍 『Developmental Evaluation Exemplars: Principles in Practice』(発展的評価事例集:実践における原則) では、教育分野などプログラムがある程度固まった事業において紹介されていたように思う。

 2017年にワシントンDCで受講したパットン氏によるDEトレーニング(TEI)では、ロジックモデルの限界を下図のように描いていた。(ちなみに、パットン氏は著書で、コーザル・リンケージCalsal Linkageという表現をよく使うそうだ) ロジックモデルの得意なこと、苦手なことを把握しながら、場合や状況に応じて適切に使い分けられるようになると良いだろう。

参考文献:「政策評価」の理論と技法